前おかみを偲んで



『生涯現役』人の笑顔を喜びに生きた人生でした

そば屋を営む両親のもと、八人兄弟の長女として生まれ、物心ついた頃には弟妹の世話をしながら店の手伝いをするのが日常で、夜店の釜のお湯を湯たんぽに詰めて自宅に駆け戻り、弟妹の布団に入れてやったこともあったと、懐かしそうに話していたのを聞いたことがあります。そんな妻の仕事ぶりは改めて言うまでもないでしょう。いつでも店のこと、お客様のことが一番。「おばちゃん」と親しげに声をかけて頂ければ、元気よく応え、「美味しかったよ」「また来るね」と嬉しい言葉を頂ければ、にっこり笑って・・・、そうして一日の仕事を終えると、今度は旦那の両親に気を遣って肩や腰をもんでやり自分のことは二の次、三の次でした。趣味を持たず、疲れている日もきっとあったはずですが、いつの時も変わらぬ笑顔でせっせと立ち働く姿にみんな元気をもらっていたからこそ、これまで励んでこれたのでしょう。病を患ってさえ『みんなの喜ぶ顔が何よりの生き甲斐』と、最後まで力と真心を尽くした姿を誇りに思います。

平成25年2月22日、72歳にて生涯をとじました。良きご縁を結び、心を通わせ、前おかみの人生に彩りを添えて下さった皆様へ、ご厚情に深く感謝を申し上げます。ひと時ともに紡いだ日々を振り返り、面影を偲んで頂ければ幸いに存じます。 

               店主